・ペルチェ半導体素子を首回りに直接装着し、冷却あるいは暖房する。
・制御部(リチウム電池と放熱器およびコンピュータ)を腰部に装着し、あらゆる環境での作業に快適なウェアラブルな装置。
本技術は省エネ分野だけでなく、健康・スポーツ医療・作業分野への応用が可能
従来のジェルタイプの冷却剤や暖房用カイロでは、きめ細かい温度制御や長時間使用は不可能である。
そこで、ペルチェ素子を用いて頸部を冷却または加温し直接人体を冷暖房することが可能な体温調整用電子機器「ウェアコン®」を開発した。温度制御や充電式なので長時間の使用も可能である。
特に、熱中症対策に威力を発揮する。
空気を介さず直接人体を冷暖房することでエネルギー消費を1/10に低減しつつ快適性や装着感などのヒューマンファクターを尺度に個々人に最適制御されるウェアラブル冷暖房機器である。
まず、本機器はペルチェ素子により頸部を冷却または加温するもので、特に冷却時はペルチェ素子からの発熱を水の循環とラジエータにより放熱する。主な仕様は、冷却部にペルチェ素子とマイクロ温度センサを装備、頸部温度を20~40℃で無段階に設定可能、過冷却と低温熱傷を防止、ラジエータ部に室温湿度センサを装備、室温と湿度によりペルチェ素子駆動電圧制御可能とした。総重量650g。
省エネルギー効果を算定した結果、個別冷暖房装置1台当たりの消費電力は、冷却時は約28W以下、加温時は約10W以下を実現。使用条件として、気温27℃以上で個別冷暖房装置の冷却機能のみ使用し、気温31℃以上ではエアコンと併用するものとし、冬季においては気温20℃以下で個別冷暖房装置の加温機能のみ使用し、気温16℃以下ではエアコンと併用するものとした。この使用条件下における想定利用者一人あたりの原油換算年間省エネ効果量は43.6リットルとなった。したがって、エアコンのみの使用に比べて1/10の消費エネルギーで済む。
頸部冷暖房は、深部温を直接制御する新しい冷暖房技術である。このため、自律神経異常など、新たな生体リスクが生じる危険性を研究し、以下のとおりの結果を得た。
1)脳梗塞の局所脳低温治療では頭頸部を5~20℃の冷水で6日間冷却するなどが、通常医療現場で実施されているが、危険性の報告例はない。本装置冷却温度は20~28℃でこれより高いので問題ない。
2)冷却パッドは日常生活で広く利用され、危険性の報告例がない。
3)低温火傷は44℃以上で発症可能性があり、本装置暖房温度は40.5℃以下でこれより低い。
4)ISO 13732-1「熱環境の人間工学-表面との接触」に、携帯電話の安全基準があり、8時間以上接触しても43℃を越えてはならないと定められている。本装置の暖房温度はこれより低い。
※本研究開発はNEDOの省エネルギー革新技術開発事業の開発資金を受けて「快適・省エネヒューマンファクターに基づく個別適合型冷暖房装置システムの研究開発」(平成23年12月~平成26年2月)として開発したものです。
※「ウェアコン」はWINヒューマン・レコーダー株式会社の登録商標です。